長瀬ランダウア株式会社
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放射線の基礎知識

身の回りの放射線

第1章
身の回りの放射線

一般の方は放射線と聞くと、“危ない”、“身体に悪い”といったマイナスイメージが先行しがちかもしれません。しかし私たちは、普段から様々な放射線が存在する環境で生活しており、そのほとんどは人体に害を与えるレベルのものではありません。また私たちは、身の回りにある放射線を様々な産業に利用しているのです。この章では身の回りにある放射線について見ていきましょう。

(1)自然放射線と人工放射線

放射線はその由来から大きく二つに分けることができます。「自然放射線」と「人工放射線」です。 「自然放射線」は、自然界に大昔から存在し、人が無意識に受けている放射線を指します。一方、「人工放射線」は人間が人工的に作り出す放射線を指し、生活の質を向上させるために、様々な分野で利用されています。
自然放射線には、主に次のようなものがあります。


  1. ① 大気中の放射線

       大気中には、ラドンなどの気体状の放射性物質が含まれています。私たちは呼吸によりこれらを体内に取り込み、体の内部から放射線を受けています。


  2. ② 食物からの放射線

       食物には、カリウム40や炭素14など、天然の放射性物質がわずかに含まれています。これらは体の組織を構成する元素であり、私たちは食物摂取を通じてこれらを体内に取り込み、微量ながら一定量が蓄積し、恒常的に体の内部から放射線を受けています。


  3. ③ 大地からの放射線

       地表面の岩石や土には、カリウム40、ウランやトリウムなど、天然の放射性物質が含まれており、これらは絶えず放射線を出しています。その放射線量は、放射性物質の含有量の違いにより、地域ごとに異なります。西日本では放射性物質を比較的多く含む花崗岩が多いため放射線量はやや高く、東日本では低い、“西高東低”の傾向にあります。


  4. ④ 宇宙からの放射線

       宇宙空間には、太陽の核融合反応や超新星爆発などの天体活動によって生まれる「宇宙線」という放射線が存在します。宇宙線の大部分は、地磁気により地球外方向に進路を変えられ、また厚い大気層によってエネルギーを失い消滅しますが、一部は地表にまで到達しています。標高の高い所ほど放射線量は高く、登山や飛行機に乗った時などは地表にいる時よりも放射線を多く受けます。



一方、人工放射線は主に医療、農業、工業、環境保全、研究分野等で利用されています章 放射線の産業利用をご覧ください)。特に医療分野では、レントゲン検査、CT検査、放射線治療など、広く普及しています。

(2)日本と世界の被ばく線量

日本と世界における自然放射線と人工放射線(医療)の内訳を見てみましょう。


年間被ばく線量の比較

出展: 原子力・エネルギー図画集、UNSCEAR2008年報告



日本は医療が発達しており、世界平均と比べて人工放射線による医療被ばくが多い特徴があります。一方で、自然放射線の被ばく量は、日本と世界で差が少ないように見えます。しかしその内訳は次の図のように異なります。



年間被ばく線量の比較

出展: 原子力・エネルギー図画集、UNSCEAR2008年報告



内訳が示すように、日本では欧米諸国に比べて食物からの被ばく(②)が多い特徴があります。これは日本人の魚介類の摂取量が多く、内臓まで食べる習慣があり、魚類の内臓に多く含まれるポロニウム210による被ばくが影響していると考えられます。
外部被ばくと内部被ばくについては、章 外部被ばくと内部被ばくをご覧ください。