第2章
放射線とは
この章では、放射線とは何かを見ていきましょう。
「放射線」とは、「高いエネルギーを持って空間を移動する光(電磁波)あるいは粒(粒子線)」と定義することができます。
また放射線は「電離放射線」として、「物質と相互作用した際、物質の構成原子から電子を弾き出す(電離する)能力を持つもの」、と定義されることもあります。
(1)放射線の種類
放射線は電磁波と粒子線の2つに分けられます。
代表的な放射線を表に示しました。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
放射線の分類
X線、γ線 | |
α線、β線、電子線、中性子線、陽子線、重粒子線 |
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① 電磁波(X線、γ線)
X線(エックス線)とγ線(ガンマ線)は、「電磁波」に分類される放射線です。
「電磁波」とは、「電場と磁場が時間的・空間的に変化する波」と定義できますが、簡単に言えば “光”の仲間です。電磁波には、質量および電荷を持たないという特徴があります。電磁波は波の長さ(波長)によって下図のように幾つかに分類することができます。
波長とエネルギーは反比例の関係にあり、波長が長いほどエネルギーが低く、また波長が短いほどエネルギーは高くなります。 従って、波長の短いX線・γ線は、高いエネルギーを持ち、電離能力のある電磁波(光)と言えます。
X線とγ線は発生機構によって区別されます。両者とも物質を構成する原子を起点に発生しますが、原子核外で発生するものはX線、原子核内で発生するものはγ線となります。
② 粒子線
「粒子線」は「高いエネルギーを持って空間を移動する粒子」であり、質量を持つ点で電磁波とは異なります。また飛んでいる粒子の種類によって性質が異なります。α線はヘリウム原子核、β線・電子線は電子、中性子線は中性子、陽子線は陽子(水素原子)、重粒子線はヘリウムより重い原子核、がそれぞれの粒子となります。
以下に放射線の種類や用途を表にまとめました。
主な用途の詳細については第7章 放射線の産業利用をご覧ください。
放射線の種類と特徴
電磁波 | X(エックス)線 | 電磁波 (原子核外) | 0 | X線管、 加速器 |
レントゲン/CT検査 放射線治療、構造解析 |
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γ(ガンマ)線 | 電磁波 (原子核内) | 0 | RI | PET/SPECT検査 放射線治療、食品殺菌 |
|
粒子線 | α(アルファ)線 | He(ヘリウム)原子核 | +2 | RI | 厚み計、RI内用療法 |
β(ベータ)線 | 電子(RI) | -1 | RI | 核医学製剤、精密計測 | |
電子線 | 電子(加速器) | 加速器 | 放射線治療 | ||
中性子線 | 中性子 | 0 | 加速器、 RI、原子炉 |
非破壊検査、BNCT | |
陽子線 | 陽子 | +1 | 加速器、 宇宙線 |
放射線治療 | |
重粒子線 | 様々な原子核 He、C、Ne、Si、Ar |
+2~+18 | 加速器、 宇宙線 |
放射線治療 |
(2)放射線と放射能
「放射線」と「放射能」は、しばしば混同されることがありますが、全く別の意味を指します。ここで放射線に関わる重要な単語をまとめておきます。
- 放射線 …高いエネルギーを持って移動する光や粒子
- 放射能 …放射線を出す能力
- 放射性物質 …放射能を持つ物質
- 放射性核種 …放射能をもつ原子核
- 放射性同位元素(RI: Radioisotope)…放射能を持つ元素、しばしば放射性核種と同義